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               馬上の姫君

          第七章    秀吉矢傷の後ー5

         北畠正室松の方秀吉の人質となるー2

 
  「御台様、織田の兵らが、屋敷を借りたいとと押し入って来ました。

 仏間からお出になりませぬように……」

  与志摩は慌ただしく松姫に知らせて、ふたたび織田の兵士の対応に走

 った。織田の士卒は土足で上がり込み、襖を開け放って各部屋を改め

 る。仏間に籠もっていた松姫も、与志摩や侍女たちが拘束されている部

 屋に引き立てられた。やがて門口に馬蹄の音がして、勢い良く五、六人

 の侍大将が上がり込み、次いで二人の武将に肩を支えられて総大将と思

 われる男が担ぎこまれた。

 「北畠に仕える者か、名を名乗られよ」

  弟滝孫八郎が佐々木与志摩に尋ねる。

 「只今、主家より勘気を被る身なれば名乗るを差し控えたい」

  与志摩は松姫の身を案じて出任せを言った。すると、その時であっ

 た。

 「御貴殿、もしかして佐々木殿ではござりませぬか。……近江の…」

 「…………」

 「滝一政の子…孫平次です。…見覚えござりませぬか…」

  与志摩は邪魔者が入って、余計なことをしてくれるわいと思った。

 確かに滝孫平次である。甲賀多喜の出身で、滝川一益の父一勝が櫟野

 城から多喜城に移り多喜村を滝村に改める以前は多喜姓を名乗ってい

 た。

  孫平次の父一政はかつて与志摩とともに佐々木六角の麾下にあった。

 松姫が北畠に嫁ぎ、与志摩が女佐の臣として北畠に来たのは天文十二

 年で、その頃、孫平次はまだ十一、二歳、孫八郎は十歳に満たなかっ

 た。多喜家は伴四党(大原、上野、伴、多喜)の一つで、甲賀多喜に

 四つの山城(多喜北城、多喜南城、梅垣城、青木城)を有していた。

 与志摩と一政はともに佐々木の庶流にあたり、その頃は、互いの屋敷

 を訪れ会って親密に交際していた。しかし、永禄二年(一五五九)

 一政四十五歳、孫平次二十七歳、孫八郎二十一歳の時、同族、多喜久

 助(滝川一益)の勧めもあって一家三百貫(三千石)の高祿をもって

 信長に仕官した。滝川一益の叔父恒利(一勝の弟)は尾張池田秀政の

 養子で、妻養徳院が信長の乳母、長男恒興は信長の乳兄弟である。こ

 の頃より信長は近江侵攻の布石として甲賀武士の調略に乗り出してい

 た。孫平次は信長の小姓組に入ったが、墨俣に出兵する永禄八年に、

 孫八郎、右近らの弟とともに秀吉の与力に配属された。与志摩も風説

 でそのようなことは耳にしていたが、まさかこの御台屋敷で孫平次に

 会おうなどとは思ってもいなかった。孫平次、孫八郎、右近らの兄弟

 は伊勢侵攻に臨み、父親から与志摩が松姫について伊勢北畠に来てい

 ることを知らされていた。与志摩は何も答えなかった。孫平次の目が

 一瞬険しく光る。担ぎ込まれた藤吉郎は半日、御台屋敷で横になって

 いたが、夜になると熱も下がり、腫れも引いて元気を取り戻した。だ

 が、半日の遅れを取ってしまったため、波瀬城や霧山城の北畠家中を

 塞き止めて大河内城に合流せぬよう釘付けにすると言う初期の目的は

 達せられなかった。波瀬御所と称された北畠一族波瀬蔵人具祐は侍三

 百、足軽二百、合わせて五百の大将であったが、秀吉が御台御所で介

 護されている頃には、既に大河内入城を果たしていた。前夜の内に、

 与力矢川下野守、阿曽弾正、出丸四郎太夫、奥山常陸介らと井ノ口を

 脱出していたのである。

  ぐっすりと休んだせいか、痛みも取れて気分の良くなった秀吉が下

 知する。

 「半日も遅れを取るとは情けなや。殿にお叱りを受けるに違いない。

 大河内城に向けてただちに出立じゃ」

  立ち上がったところへ滝孫平次が進駐に及ぶ。

 「御大将、この屋敷内に北畠の奥方が匿われているのをご存じか」

  それから厳しい詮議が始まり、とうとう侍女のお倉が、お松の方の

 御台屋敷であることを白状した。その日から松姫は佐々木与志摩とも

 ども木下秀吉の捕虜になった。秀吉は、治療のため立ち寄った館(やか

 た)で、敵軍の奥方を捕縛するという思わぬ戦果を得る。


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