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馬上の姫君   第七章   秀吉矢傷の後ー1   
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               馬上の姫君

          第七章  秀吉矢傷の後ー1


  信長が伊勢の国司北畠具教を攻略するため、三河、遠江、尾張、美

 濃、近江、北伊勢の五万を超える大軍を率いて岐阜を発進したのは、

 与志摩が伊賀から帰って二ヶ月余り後の八月二十日のことである。

  二十六日、木造の二人の家老柘植三郎左衛門、源浄院(滝川三郎兵

 衛尉雄利)らが北畠攻めの先兵となり南進、滝川一益(多喜久助)が

 随所に放火、光隆寺、善応寺などがことごとくが灰塵に帰した。同日、

 先鋒の木下藤吉郎が三千の精鋭を率いて阿坂城の攻撃を開始する。

  迎え撃つ北畠勢は、ここ二ヵ月にわたる同族木造や関、長野らとの

 死闘の果てに迎えた織田の攻撃であったから、疲労困憊の極みにあり

 精彩を欠いていた。

  信長は馬廻り衆を引きつれて、雨あがりの嬉野平野を疾駆する。

 「まず阿坂の城を落とせ」

  敵情視察の後、下知、戦闘の采配を藤吉郎に委ね、自身は雲出川北

 岸に引き下がった。

  阿坂城は白米城として著名である。これは、南北朝の昔、国司三代

 の満雅が足利の大軍五万を迎えて戦った時、兵糧攻めに遭い、水を止

 められて苦しんだが、馬の背に白米を流して水があるように見せかけ

 て欺き、退却させた故事による。城は標高三町弱(三百十叩砲麟瞳

 山の頂上にあり、天然の要害で、背後には重畳たる堀坂山系が吉野や

 紀州まで続き、谷間では北畠に仕える武士が半農半士となって山林を

 育て、田畑を耕していた。信長が藤吉郎に采配を委ね、雲出川北畔に

 宿営したのも、この山野からのゲリラ蜂起を懸念したためである。

  山中にはいく筋もの道が走り矢頭峠や波瀬越えに霧山城、大河内城、

 坂内城、三瀬谷城などへ連結していた。

  北畠勢は信長南進の道筋にあたる七つの城に兵力を分散して籠城、

 織田勢を牽制する作戦を取った。七城とは、今徳山城(安濃郡・

 城将奥山常陸介)、小森上野城(一志郡・城将藤方入道慶由)、八

 田城(一志郡・大多和兵部少輔)、曾原城(一志郡・天花寺小次郎

 広高)、岩内城(飯高郡・岩内主膳正光安)、船江城(飯高郡・本

 田小次郎親康、後見本田右衛門尉)、そして、藤吉郎秀吉の取り掛

 かった阿坂城である。

  阿坂城代は北畠四家老の一人、大宮入道含忍斎、城将は武蔵守、

 伯耆守、大之丞らの大宮一族、籠城の侍大将は本居惣助、田畑金太

 夫、沼田伊予守、末松右衛門左、梶尾主馬、寄金三郎兵衛、金児二

 十郎、佐波七郎兵衛、渡辺丹波などの一志周辺の侍である。

  与志摩も小原の北畠国永と御台屋敷から駒返りの道を馬跳ばして

 阿坂支援に駆けつけた。国永の子息具就は庸安院殿の息がかかりす

 でに木造方の武将になっていて家を二分している。

  与志摩が城に入ると時を同じくして、霧山の城から横山左馬助、

 秋田七郎次郎、斉藤小次郎、矢川下総守ら三百騎が矢頭越しに来援

 した。

  「父祖伝来の山林田畑を尾張者に略奪される訳にはいかぬ」

  北畠に仕える者は半農の者が多く、その殆どが山林業を営んでい

 る。

  「天下に名の轟く白米の城を落とすわけには参らぬ」

  地史に詳しい本居惣助が檄を飛ばす。眼下には藤吉郎の指揮する

 三千の軍勢が小さく点在していた。右往左往している木下勢は阿坂

 城を前にして、手を拱(こまぬ)いているように見える。


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